【保育ICTラボ事業】ICT導入に不安を抱える園を支援する豊中市の「往還型研修」が始動しました

事例集・取組内容画像

    保育ICTラボ事業は、保育施設でICTを活用し、職員の事務負担軽減や保育の質の向上を目指すこども家庭庁主導の取り組みです。コドモンでは大阪府豊中市と茨城県つくば市とともにこの取り組みを進めています。(保育ICTラボ事業における豊中市の取り組みはこちら

    豊中市の取り組みでは、一般社団法人保育ICT推進協会の協力のもと、保育ICTの導入や活用に不安のある園を支援する「往還型(おうかんがた)研修」を2025年7月から4回に分けて実施しています。この記事では「往還型研修」の目的や第一回目の研修の様子、受講された方の感想などを紹介します。

    ■大阪府豊中市
    ・大阪府北部に位置
    ・人口:約39.8万人(2025年6月1日時点)
    ・市内保育施設:約200施設(認可外施設約70施設含む)
    ・「子育てしやすさNo.1プロジェクト」を推進し、デジタル行政・地域教育などの政策を展開

    保育ICT導入や活用促進を支援する「往還型研修」とは

    往還型(おうかんがた)研修とは、研修で学んだ内容を実践し、再び研修で振り返る、というサイクルを繰り返しながら知識と体験を身につけていく研修方法です。
    豊中市では保育ICTラボ事業の一環として、保育ICT導入や活用に不安がある市内9施設を対象に、以下のスケジュールで往還型研修を実施し、各園のICT導入と活用促進を支援する取り組みを進めています。

    <研修スケジュール>
    2025年
    第1回:導入研修(目線合わせ) 7月
    第2回:進捗確認と軌道修正 9月
    視察回:モデル園への視察 10月
    第3回:中間振り返り研修 11月
    2026年
    第4回:最終研修 1月
    最終回:報告・共有会 2月

    <往還型研修のイメージ>
    豊中市保育ICT研修

    豊中市の保育園が抱える課題と保育ICTの導入状況

    豊中市は公立・私立を合わせた市内保育園のICTの導入が約7割と、比較的導入率が高い自治体です。とはいえ保育ICT導入園のなかでも活用状況はそれぞれ異なっており、活用が進んでいない園もあるのが現状です。
    コドモンでは、豊中市と協同で保育ICTラボ事業を進めるにあたり、園の通常業務に負担が少ない研修方法を検討しました。そこで一般社団法人保育ICT推進協会との共同による「往還型研修」を提案し、公立・私立を問わず保育ICTに課題を感じている園にお集まりいただき、課題を共有しながらICT導入につなげる研修を実施することになりました。

    <豊中市 こども未来部 こども事業課 課長補佐 兼 事業所係 係長 福嶋さまからのコメント>
    「今回の研修を通して、隣接する園の実態や取り組みを知ることで、先生方の意識がよい方向に変わっていくことを期待しています。月に一度の園長会では特定のテーマを深掘りする機会がないため、今回のように民間・公立園の垣根を越えて意見を交わす機会は大変貴重だと感じています。」

    保育ICTの活用を目指す「往還型研修」第一回目の内容

    第一回研修は2025年7月8日に開催。市内9園の担当者が集まり、午後の3時間をかけて実施されました。
    冒頭、コドモン担当者より研修の概要を説明し、「自園に戻った際に、ICTの導入や活用推進に向けて何をすればよいかイメージできている状態」をゴールとしたい旨をお伝えしました。その後、一般社団法人保育ICT推進協会代表理事の三好冬馬さまによる研修が始まりました。
    往還型研修の様子

    <第一回研修の流れ>
    開会・挨拶/研修の背景と目的(コドモン)
    本研修の概要説明
    ワークショップ①
    休憩
    ワークショップ②
    フィードバック・質疑応答
    閉会・挨拶・コドモンからのご案内

    講師の三好さまからは、令和7年度が保育需要のピークをすぎる転換点であることや、待機児童対策から質の高い保育へと軸が移ってきていることを解説いただきました。
    また、国として今年度中に保育ICT導入100%を目標としていること、現状は全国で6〜7割程度の導入率であることなどを説明。
    これまで保育ICTは保育者の負担軽減が目的でしたが、今後は施設管理プラットフォームを使用して行政による監査業務や助成金の給付などを円滑に行うことを目的にしていく方向性も紹介されました。
    参加者は保育ICTの導入の有無や公立・私立など、さまざまな形態の園が1グループになるように振り分けられ、グループごとにワークショップを2回実施しました。

    <ワークショップ①>
    ワークショップ①は、以下の流れで行いました。

    • 自己紹介

    • 個人ワーク:保育ICTについて感じていることを付箋に記入

    • グループ共有

    • 全体共有

    自己紹介では、「ICT化により保護者から好評な面もあるが、導入に時間がかかることもあり、もっと事務を楽にしたい」
    「職員からは『一部アナログのほうがいい』という声もあり、よりよく活用していくためのポイントを知りたい」
    「どの職員も活用しきれず、アナログのほうが楽だと感じてしまっている。本日を機に一歩踏み出したい」といった話がありました。

    次に、保育ICTについて感じていること(期待、課題、不安)を付箋に記入し、保育ICT導入に対する各園の温度感や課題を可視化していきました。

    <付箋の内容> ※一部抜粋

    • 職員のシフトを自動で組み込みたい

    • 写真の配布時の枚数平等性が気になる

    • セキュリティ的な側面の不安

    • 監査が簡素化されることに対する期待

    • 園バスの乗る乗らないの打刻の管理(リアルタイム管理)が大変

    • キャッシュレス(延長保育など)に対して、結局手計算する作業が残存
      往還型研修2

    その後、各個人の意見をグループで共有し、全体発表を行うことで、お互いの課題をヒアリングし合いました。

    <ワークショップ②>
    休憩を挟んで実施したワークショップ②では、保育ICTを導入しても活用できない場合やつまずきやすいポイントを三好さんからご紹介いただき、課題の本質を洗い出すことの必要性について説明していただきました。
    その後、自園の目標を設定し、「保育DXアクションプラン」を作成する課題が出されました。

    ワークショップ②は以下の流れで実施しました。

    • 施設の目標を記入する

    • 課題を記入する

    • 取り組むテーマを記入する

    • それぞれの取り組みを記入する
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    <保育DXアクションプランの例>
    アクションプランの例

    作成したプランは園に持ち帰り、実践してみた結果を次回の往還型研修で共有して、保育ICT活用の具体的な方法を導いていく予定です。

    往還型研修を受講した方の感想

    第一回研修を終え、参加者からは
    「実際にコドモンを導入・活用されている園の方の話が聞けて良かった」
    「他園の取り組みや悩みを知ることができた」といった声をいただきました。
    またもっと知りたいポイントとして
    「具体的な活用法、どのあたりが業務削減につながっているのか」
    「細部のメリットデメリットが知りたい」
    「活用園での一日の活用事例を見てみたい」といった要望もいただきました。

    各園ともに研修に対してポジティブな反応が多く、前向きな雰囲気で会を終えました。
    課題を見つめ直すきっかけづくりや、他園の活用実績を共有し合う場として、当初の目的が達成できた一日となりました。
    次回からは、第一回研修で描いたアクションプランの実践を通して見えてきた新たな課題について、研修を行う予定です。

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    ▲豊中市こども未来部 こども事業課 仮屋さま、福嶋さま、保育ICT推進協会の三好さま(左から)

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