400名規模の園を支えるICT活用 ― 「町田自然幼稚園」の効率化と安全への工夫
基本理念に「いきいき」を掲げる幼保連携型認定こども園「町田自然幼稚園」は、約1820坪の幼稚園の敷地に加え、6000坪に及ぶ簗田寺の庭や山林を自由に駆け巡ることができる豊かな環境の中にある幼稚園です。
園児数の増加に伴う事務作業や安全管理の負担が課題となり、8年前からICT導入を進めてきました。約400名の園児を預かる町田自然幼稚園の森美千絵園長先生と、清里奈子副園長先生にお話を伺いました。
認定こども園化で直面した課題は「人数増加による事務負担」
――ICTへの取り組みをスタートしたのはいつごろでしたか
森園長:「町田自然幼稚園」が認定こども園になり今年で11年目になりますが、こども園になったことをきっかけに園児数が増えて、事務作業が増加。少しでも効率化しようと、約8年ほど前に理事長からICTを導入してはどうかと提案がありました。
当時、わたしは保育主任だったのですが、手作業の事務処理もたくさんあり、先生の残業や子どもとの時間の取りにくさが課題と感じておりましたので、これを機にデジタルに任せられることは任せてみようと思いました。
最初の一歩は「登降園システム」から
――現在15項目ものICT関連システムを導入していますが、とくに効果を感じたのはどんなシーンでしょうか
森園長:やはりまずは「登降園システム」です。こども園に切り替わって以降、延長料金などの行政への報告が発生しており、当時は管理が大変でした。わたしが前職の職場で「登降園システム」を利用した経験もあったため、まずはこれを導入しました。毎日の集計などがかなり楽になったと実感しました。

清副園長:「おたより」もかつては紙で全員に配布していましたが、印刷物を作って→コピーをして→クラスごとの人数分に分けて→折って→お名前を書いて→ひとりひとりのバッグに入れる…と、配布までに非常に多くの作業工程がありました。何かをおしらせしたいと思ったら前日までにこれらすべてを整えて、翌日やっと配布です。でも4年ほど前に「おたより配信アプリ」を導入してからは、その日のうちに準備して配信まで完了しますし、ちょっとした連絡やリマインドなども配信しやすくなりました。

ーーリマインドはどんなシーンで配信するのでしょう?
清副園長:たとえば「明日は〇〇に行くので9時までに登園してください」とか「明日の遠足はおべんとうのご用意をお願いします」といったことを、印刷等の手間なく手軽に伝えられるようになりました。
森園長:午睡の時間に準備すれば夕方には配信できますから、以前の前日準備と比べたらかなりの業務効率化ですね。ペーパーレスにもかなり貢献していると思います。
バス乗降のチェックも安全・効率的に
清副園長:「バスの乗り降りチェック」も導入してよかったサービスのひとつです。毎日どの子がバスに乗るのか・乗らないのかの把握と伝達が大変でした。早退や保護者のお迎えのケースもあるので、毎日降園時までにこれらの情報を紙に記して、バスにもクラスにも伝えなければならず、かなりの時間を要していましたしミスも出やすい部分でした。
「バスの乗り降りチェック」導入後は、たとえば保護者が「今日はお迎えだからバスは利用しない」といった場合は、保護者がスマホからバス不要の操作をしていただければ、即時でクラスにもバスにも伝わります。もちろん安全にかかわる部分は、最終的には目視でも確認しますが、ICTによってかなりの時短になっていることは間違いないです。
“すべて置き換える”のではなく、目的に応じて使い分ける
ーーICTのスムーズな導入に際し、コツのようなものはあったのでしょうか。
森園長:まず、導入当時はスマホを持たない保護者もいらっしゃったので、たとえば「おたより」は紙と併用しました。紙をご希望の方には従来通りプリントでお渡しする運用でしたが、1年ほどでほぼすべてのご家庭が「アプリ配信でOK」となりました。
とはいえ今も、紙で配布するものも「ゼロ」ではないんです。たとえば5歳児には就学準備も兼ねてあえて「紙のプリント」を渡すことがあります。「あしたは遠足だから、おうちの方とこれを準備してね」と伝えてひらがなをふった「おたより」を渡しています。便利だからといってなんでもICTでというわけではなく、使い分けが大切かなと思っています。

清副園長:機能によって操作できる人員をしぼることもあります。「おたより」の配信はミスがあると保護者に迷惑やご心配をおかけすることになるので、配信操作ができるのは、園長・主任・副主任・事務担当・わたしのみにしています。人数を絞ることで配信ミスなどの事故を防いでいます。
ーー保護者さま側に、導入ハードルはありましたか?
森園長:20~40代前半までの保護者が多いですが、デジタルに慣れていらっしゃる方が多い印象です。とくにコロナ禍を経て「デジタルを使いこなそう」と保護者の意識も変わったように感じています。もちろん、苦手な方もいらっしゃるので、新入園説明の際にアプリの使い方に関する説明会を開き、その場で操作もしていただきます。在園の方にも年度初めに操作などをお伝えする機会を作っています。
「パスワードがわからなくなってしまった」といった簡単な問い合わせに答えられる職員を準備する、というのもポイントです。ちょっとしたことですが、保護者にストレスなく利用いただくために重要なことだと思います。
【認定こども園 町田自然幼稚園による、導入の第一歩】
導入成功のカギ:登降園システム導入がおすすめ
森園長:ICTと聞くと最初は壁があるように感じるかもしれませんが、実際にやってみると思っていたほど困難は感じず、手作業や紙から解放されて、効率化が実感できるようになりました。職員も若い年代の先生はとくに、学校教育でもデジタルに触れているようで、気持ちの面での障害はあまり大きくなさそうです。
もしも導入に迷っていらっしゃる場合は、まずは「登降園システム」から始めるのがおすすめです。日々の業務に直結するため、効果をすぐに実感できるのではないでしょうか。
町田市認定こども園 町田自然幼稚園
- 園児数:400名
- クラス数:10クラス
- 保育士:50名
- ICT導入時期:2017年4月ごろ~順次導入
施設名