【愛媛県松前町】保育ICTラボ事業における取組② ICT活用を自治体から推進|ICT未導入の公立園で、スムーズな導入と定着の実現へ
愛媛県松前町では、令和7年度に公立4園で保育ICTシステムの一斉導入を行いました。複数園での円滑なICT導入と安定的な定着の実現を目的に、「保育ICTラボ事業」に取り組んでいます。
▶松前町の保育ICTラボ事業の全体像は【こちら】
▶取組内容前編は【こちら】
本記事では、その続編として
・公立園での一斉導入サポート
・県内自治体向け見学会
・現場職員参加の成果報告会
についてご紹介します。
(1)公立園での一斉導入サポート
今年度松前町で実施した、公立園の一斉導入サポートでの取組の詳細やポイントをご紹介します。
〇ワーキンググループ・巡回訪問を組み合わせた導入支援
- 年間5回実施
- 導入前後で各施設への巡回訪問→課題の洗い出し、園ごとの運用差・特徴の把握
- 各施設代表者によるワーキンググループ→方向性の合意、共通ルールの検討、他園の工夫の共有等
<ポイント>
自治体が方針を定め各園に一律の運用を求めるトップダウン型ではなく、外部人材が中立的な立場で支援に入り、園ごとの状況を踏まえながら対話を通じて方向性を合意形成する設計としました。その結果、
- 園ごとのばらつきを抑制
- 共通認識の醸成
- 現場の納得感
につながりました。
〇外部専門家による支援で「ICT導入効果を最大化」「現場の自走力の育成」
- 他自治体や他園の事例紹介、運用のポイント整理、よくある失敗事例の共有、判断材料となる客観的データの提供など、検討に必要な情報を提供・助言
- 専門家に相談できる体制を整え、不安を減らす
<ポイント>
「なぜやるのか」「どうすればうまくいくのか」をともに考え、現場が自ら選択できる状態をつくることを重視しました。結果として、ICT導入に抵抗感のあった現場で、前向きに取り組む雰囲気が醸成されました。
(2)県内自治体向け見学会
開催日:2026年2月13日(金)
開催場所:松前ひまわり保育所、あおなみ まさき園
参加自治体:伊方町、伊予市、上島町、松山市、八幡浜市、愛媛県
県内自治体職員向けに、モデル園と、ICTを活用している私立保育所の2園を視察する見学会を実施しました。

①ラボ事業についてのご説明
②園内見学
- タブレットの配置状況(登降園・給食室・各クラスへの配置状況)
- 保育システムの各機能の活用状況
- センサーマット導入の経緯、活用状況
③質疑応答、自治体間の意見交換
- 打刻の方法
- Wi-Fi環境(LGWANのWi-Fi)
- 端末数
- センサーマットの厚さや保管方法
- システム導入・活用状況について情報交換
■見学会後アンケート結果
参加自治体の約90%が本イベントに「非常に満足」「満足」と回答しました
- 実際に使用している施設への見学やいろいろな自治体と意見交換をすることができ、勉強になった
- 周辺自治体の動向が知れ、本市との比較ができた
(3)成果報告会

開催日:2026年2月13日(金)
開催場所:松前町役場 大会議室
対象:愛媛県内の保育施設関係者・自治体担当者
参加者数:61名(町内保育施設関係者47名、松前町職員7名、他市町職員7名)
<ポイント>
- 現場職員に参加いただき、今年度の取組を一緒に振り返ることで、来年度以降のICT活用に向けた意欲・前向きな機運を醸成
意見交換後の発表パートを設け、職員の“生の声”(変化・課題・工夫)を自治体内・他自治体にも共有できる構成としました
■ 基調報告
冒頭、松前町保健福祉部 部長の金子様より開会のご挨拶があり、その後、当協会代表・三好より、
- 保育ICTの最新動向
- 今年度の松前町における保育ICTラボ事業の取組
について報告しました。
■ 意見交換、グループ討議
3つのテーマに沿って、率直な意見が交わされました。
テーマ①「ICTを取り入れて日々の業務で一番変わったと感じていること」
- 朝の電話対応が減り、保育に集中できる(感染症流行時の電話対応回数の減少など)
- 欠席連絡・健康チェックなどが、紙のファイルをめくらずに一覧で確認できる
- 園内連絡で、クラス間の行き来(情報を取りに行く)が減り、共有がしやすくなった
- 他クラスの家庭状況・連絡帳内容が把握でき、職員間の理解・連携が進んだ
- 保護者側の入力が増えた、丁寧になった(子どもの様子欄など)という声も
テーマ②「ICT化を進める中で戸惑ったこと・不安に感じたこと、まだ課題だと感じている点」
- 入力が苦手な職員の負担感(時間がかかる、申し訳なさ、慣れるまでの不安)
- 園内連絡が「連絡」と「情報共有」が混在し、遡って探す手間が発生するなど運用面の課題
- 連絡帳の承認・誤字脱字チェックなど、確認作業の時間が課題
- 説明しても受け取り方が違うなど、職員・保護者への周知の難しさ
テーマ③「どんな保育・職場が理想か」
- 1人1台端末など、ハード面の充実
クラスだより・園だよりの改善(フォーマット化・誰でも使える形)への期待
ベテラン職員の抵抗感・不安をどう乗り越えるか
参加していた、「今後ICTを導入予定の他の自治体」からは上記のような質問が寄せられ、現場から具体的な工夫が共有されました。
- 「やるしかない」だけでなく、導入前に触ってみる・得意な人が教える・園全体で試す雰囲気が不安軽減に効果的だった
- 町としては数年前から、手書き書類を減らしWord/Excel化するなど、段階的な準備を進めてきた
- 4園で情報共有して進めたこと、保護者が想像以上にスムーズに使えたことが後押しになった
■成果報告会後アンケート
町内保育施設関係者の97%が町全体でのICT導入に一体感が生まれたと回答しました。

また、「本イベントで紹介されたICT活用事例は、貴自治体の保育ICT推進におけるロールモデルとして参考になりましたか?」の問に対し、100%の自治体が「非常に参考になった」「参考になった」と回答しました。

- ICTを導入してみての意見交換を通して、自分の考えを共有したり他の先生、他園の意見も知ることができ参考になった(保育施設関係者)
- 意見交換をする中で、他市町のICT施策が保育現場にどの程度まで浸透できているのか確認することできた(自治体関係者)
- 他自治体の状況や、保育施設の現場の声を聞けた(自治体関係者)
【当協会代表理事 三好より】
松前町の取組を通して改めて感じたのは、ICT導入はシステムを入れれば進むものではなく、現場が納得して動ける状態をどうつくるかが本質だということです。特に今回は、ICT未導入の公立園で4園同時に導入を進めるという取組でしたが、巡回訪問とワーキンググループを重ねることで、各園の不安や違いを丁寧に拾いながら、町全体で前に進むことができました。成果報告会でも、現場職員の生の声が共有され、うまくいったことだけでなく、戸惑いや課題も含めて学び合えたことに大きな意味があったと思います。
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